ちはる 保健室登校中
――ねえ、待ってよ。

そう思っている自分に気づいた。

――もう行っちゃうの?

心の声が口からナマの声となって出てくることはなかった。


胸がぎゅっと痛む。

同じ校舎にいるのに、
追いかければすぐ会えるのに。

目のはじっこに、涙がたまってきた。

懐が行ってしまったことがそんなにさみしいの?
どうかしてるんじゃない?


涙がレンズになってくれたのか、いつもより少しだけ、景色が鮮明に見えた。

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