愛を教えて。
「ねぇ、白石さん。この方は?」



いきなり、糸井エリナは髪の毛を整えたり、スカートのすそをはたいたりしながら、私にしおらしく聞いてきた。



私と桐生響の関係を疑うより、自分と彼の距離を深めたいらしい。

私の予想は、まったく当たらなかった。





「えっと…」




桐生響ということ、性別は男だということ、カレーを作ることができること、それ以外は知らない。


私はうつむいて、考える。


どう説明すれば自然だろう。


兄…なわけないし。

彼氏と答えても、現在フリーの糸井エリナの余計な怒りを買うだけ。



どうしよう。






「君、綾音ちゃんのともだち?」


「はっはい!糸井エリナと申します」


桐生響は、彼女に近づきながら、そう問う。


糸井エリナは彼に笑顔でこたえる。

ふと、顔をあげると一瞬だけ桐生響と目があった。
あったような気がした。










えっ……


   
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