愛を教えて。
腕時計と不安と
もう関わることはないと思っていた。



関わりあうこと自体面倒だと思っていた相手。



“桐生響”がそこにいた。




手にはなにやら、おおきな袋をさげていて、ヘアスタイルは前と全く変わらない。


愛らしく、前髪をゴムで結んでいる。


今日のゴムの色は緑色。




「綾音ちゃん?」




馬鹿みたいに顔くしゃくしゃにして笑って、もう一度私の名を呼ぶ。


糸井エリナは、目の前のラフな格好をした見たことのないイケメンと私を交互に見つめる。




まだ、状況を理解しきれてないらしい。


勝手に勘違いしてくれれば、幸いだけれど、後が怖い。


でも、今目の前にある居場所や宝物を失うことよりも、数倍楽だ。

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