Fahrenheit -華氏- Ⅱ


不可思議な夢を見ては、はっと目覚める。そんな日常が続いていたから、当然睡眠不足であるわけで。


その疲れに伴って食欲も減退していった。


リズムの悪い睡眠で、何時間もベッドの中で身じろぎすることもあれば、ソファで横になったまま意識がなかったこともある。


コンディションは最悪。頭痛はするし、ソファで眠っているせいで腰も痛い。集中力も持続しない。


そんな中、瑠華が桂林のリゾート開発権の稟議書を上げてきた。


悪い話ではないが、どこか気になる。


桂林のリゾート開発権の稟議書は実に細かく丁寧に仕上げてあった。


相変わらず徹底した仕事ぶり…なんて感心したけど、その少しの引っかかりが俺を躊躇させた。


瑠華はきっとこの稟議を仕上げるためかなりの時間を費やしただろう。


それでも俺が「ゴーサインは出せない」と言うと大人しく引き下がっていった。


彼女に特別な落胆の表情は見られなかった。


次の瞬間から変わらず淡々とした手さばきで、無表情に業務に当たっていたわけだ。


可哀想なことをしたかな…と若干後悔しつつも…


俺も数分後には気持ちを切り替えて、次の業務を行っていたわけだが―――


俺の方は全然大丈夫じゃない…


小さなミスを繰り返して、挙句の果て瑠華に仕事を取り上げられた。


だけど彼女はこんな不甲斐ない俺を攻めていたわけではなく、


逆に彼女らしい励ましで俺を元気付けてくれた。



“今日泊まりにいってもいいですか?”



そんなメモを貰ったら―――もう元気一杯!!


色んなところが……






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