Fahrenheit -華氏- Ⅱ


その晩、俺は枕を涙で濡らした…


と思ってたらよだれだった。


なんかかっこつかねぇな、俺……


時差や、彼女の行動を考えて、なかなかメールや電話ができないでいる気弱な俺。


と、寂しい気持ちを紛らわすため土曜日は仕事をして、日曜日は久しぶりに社会人野球の試合に参加した。




天気は晴天。若干眩しいものの、風もなく絶好の野球日和だ。


ぬけるような青空に綿菓子みたいなふわふわした白い雲が浮かんでいる。


20分かけて品川区の大井埠頭中央海浜公園に行くと、すでに野球のコートには15人程のチームの連中が集まっていた。


平均年齢は35歳。みんな腹が出たおっさんだ。


年齢のせいもあってメンバーは大抵奥さんや子供を引き連れている。


俺より一歳若いメンバーの一人も、可愛い奥さんと可愛い息子連れだったことにはびっくりだった。


「啓人は彼女連れてこないのか~?」


なんていっつも聞かれるけど、スルー。


下ネタ大好きな困った人たちだからな…


いや、俺だって普通に話すけどね。


可愛い瑠華なんて連れて行くと、みんなのカッコウの餌食だ。





それにしても…朝10時だってのに、子供たちは元気だ。


はしゃいだ声を上げて走り回ってる。


「おはようございまーっす」


声を掛けると、


「よーっす!待ってたぞぃ!」なんて歓迎を受けた。


上は40歳から下は20歳。と言っても20代は俺も含めて、たったの三人。


「若い」と言う理由だけで、やたらと重宝されているわけだ。








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