Fahrenheit -華氏- Ⅱ
あの赤ん坊の手は―――、一体なんだったんだろう…
ガラにもなく怖かったのか、当然照明を落とした暗い部屋に、すぐに明かりをつけた。
別に…ホラー映画が苦手とかじゃないし、お化け屋敷だって行けるだろう。
でも“ホンモノ”を目にしたら?
再びぞくりと冷たい何かが体を走り抜け、あたしは慌てて頭を振った。
気のせいよ。
そう片付けて、あたしはクローゼットを開けた。
ハンガーラックにはたくさんの服が掛かっている。
その中に心音が買ってくれたセットアップスーツが掛かっていた。
上品な色合いのグレージュのジャケットとカットソーのデザインはシンプル、ネイビーのスカートはラインがきれい。全てアルマーニの秋物新作。
けれど、靴は―――?
ダイアナを思い浮かべたけれど、結局、心音が買ってくれたジミー・チュウのパンプスに決めた。
濃いベージュに黒いレースがアシンメトリーに配置されているもの。
二人で一つ。
そうだけれど、もし計画が失敗したのなら、靴を脱ぐのはあたしだけ。
心音に裸足で歩かさせない。