Fahrenheit -華氏- Ⅱ

何だかんだで、どうにもこうにも目立つ俺たちは、逃げるようにそそくさと会計を済ませ店の外へ。


どさくさに紛れて会計を村木婦人が支払ってくれて、それには俺も慌てて財布を取り出したが、婦人は


「いいんですの。主人と娘がご迷惑をお掛けしたものですから」


と上品な仕草で恐縮。


いや、迷惑とかじゃなく……俺の勝手な勘違いで無粋なことをしたのは俺たちの方で……


と母親と俺が店先でペコペコしている間


「村木さん、先ほどお嬢様から事情を窺いました。ご結婚を反対されてる、とか」


「柏木補佐…またあなたですか。これはうちの問題です。他人に首を突っ込まれたくない」


と村木がピシリと言ってツンと顔を背け、


ぉい!村木ぃ!!瑠華がせっかく取り合ってやろうとしてるのに!何だその態度は!


と俺の方が怒り爆発寸前……


だったが


「お父さん、今の言い方酷いじゃない!!彼女は真剣に私の話を聞いてくれて相談にも乗ってくれたのよ!」


と娘の方が先に爆発した。


「会社でも女の子たちにこんな態度取ってるんでしょ!だから陰口叩かれて嫌われてるのよ!」


陰口??嫌われてる……?


当たってるだけに何も反論できん。


てか娘にまでもそう思われてたなんて~ぷくく


と俺は下を向きながらニヤリ。


そんな俺を瑠華が軽く小突く。


「首を突っ込むつもりはありませんが、ここは店先なので続きはご自宅に戻られてからにされては?」


と瑠華は相変わらず氷河期かっ!てぐらいクール。


「話す気はない」と村木が顔を背け「俺は認めない」と言い


「私だって認めてもらおうなんて思ってないわよ!」と娘がヒステリックに叫び顏を背ける。


「ちょっと……ねぇ、本当に外だから一旦帰りましょう」と唯一(?)冷静な村木婦人の言葉に、しぶしぶと言った感じで双方は折れ


「でも私お父さんとは一緒に帰らないから」と言い出し、何やら雲行きは怪しい。いや、もうとっくに怪しかったんだけどね。


嵐が来そうな予感。


「私も今はお前と帰りたくない。一杯飲んでいく。


この二人と」


と、村木があろうことか俺たちを指さし、


ああ、怪しい雲行き通り越して、土砂降りで、しかも風まで出てきた。予感ではなくすでに台風!!


俺ら!!?


てか俺はお前に話なんて何もねぇよ!


と思いつつも、まだ了承を得ていないにも関わらず繁華街へと歩き出す。


あ、嵐………きたーーーー!?


「え…?ちょっと村木っ……部長」と俺が慌てて村木の背中に問いかけるも


「うちの人がすみません。ああ言ったら聞かない人なので。主人を宜しくお願いします」


と婦人が丁寧に頭を下げ、


いや、宜しくされても……と正直思ったが


「行きましょう。あのままでは何をするのか分かりません」と瑠華が村木の方に足を向け


ど、どーなっても知らないよっっ!!


もうヤケクソ!とばかりに俺も走り出した。


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