Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「まぁ、大胆ね」右隣に座った紫利さんが小さくため息を吐き


「ドロップ(※)よ」と言いながら手札をテーブルに並べる。
(※ドロップ:賭けをおりること)


ハートの1、ダイヤの2、ハートの2、7のハート、クラブの5


「きっと心音ちゃんの勝ちね。瑠華ちゃんは堂々としているけれど、心音ちゃんは勝ちに自信がるみたいだし」


心音は自慢げにカードを開いた。


「スリーカード」


心音のカードはスペード、ハート、クラブのA、7のハート、5のクラブ。


ふふん、とも言いたげで、すでに勝ちを確信しているのか


「あたしからユカリへの質問、と言うかお願い?してもいい?」


心音がテーブルに頬杖をつき目だけを上げて紫利さんを見つめる。


「お願い?」紫利さんは目をぱちぱち。




「ええ、何かあったとき、瑠華を――――


守って欲しいの」




あたしを―――…?


紫利さんとあたしは思わず顔を合わせた。


「あたしたちの計画は完璧よ。PC上はね。だからPC相手だったら絶対負けない。


だけど今回は対人間も絡んでくる。相手がどう出るか予想もできないところがある。


何かあったとき、あたしはNY。瑠華をすぐ近くで見守ることも話を聞いて抱きしめることもできない。


それだけでいいの、瑠華の心のよりどころになって欲しい」



心音―――……



「それは勿論よ」紫利さんはおっとりと微笑んだ。「そんなことで良ければ、幾らでも」


「ありがとうございます。でもあたしは負ける気はありません。


今現在、緑川さんに近づくあたしは二村さんにとってもっとも脅威な筈。攻撃の先は間違いなくあたしに向く」


あたしは手札をテーブルに置いた。


7、8のスペード、J、Q、


そしてKの


スペード



「フラッシュ。


言ったでしょう?あたしは負けると分かっている勝負には挑まない」



啓と緑川さんは




あたしが守ってみせる。



この勝負、二村さん、あなたにはドロップ(降り)て貰うわ。

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