Fahrenheit -華氏- Ⅱ
二村の言動や行動が一々気になる。
あんな感じで俺の外出中、瑠華にちょっかい掛けてるのか気になって外回りをするのもどうか、と思った。
瑠華の隣に居づらい、でも俺の知らない所で二村が瑠華にちょっかい掛けてるのかと思うと、それ以上に腸が煮えくり返る。
結局、俺は自分の感情を優先させ、午後からの外回りをやめた。
幸いにもアポを取っていなかった。
斜め前の席で「そう言えばもう週末ですね~、柏木さんまたどこか飲みに行きませんか?」と、この頃すっかり打ち解けたのか佐々木は随分ストレートに瑠華を誘うようになった。
「すみません、用があるので」
と瑠華の対応も最初来たばかりのときより随分マイルドになった。
前だったら『行きません』て一刀両断だったのにな。
でも、実際用はあるようでその日も瑠華は早めに仕事を終えて、帰り支度をしていた。
佐々木は席を外していて、ちょうど周りに誰も居なかった。
瑠華はバッグをデスクの上に置き
「明日、心音が帰るんです。しばらく会えないので、今日はゆっくりしようかと」
と報告してくれた。
書類にペンを走らせていた俺は目を上げ、ペンを握ったまま頬杖。
「そっか~、意外と早かったね、七日間」
「長かったです、七日間」と瑠華は苦笑。
「でも、楽しかった?」と俺が聞くと
「ええ、とても」と言って、俺の耳元でそっと「啓のおかげです」と囁く。甘い呼気が耳朶をくすぐる。
このときばかり―――
俺たちは……いや、俺は何も知らなかったときと同じ感情になれた。
「明日はどうやって空港に?」
「あたしの車で送っていこうかと」
「あの車(LFA)で?心音ちゃんの大きなスーツケース持って行くの大変じゃない?」
「タクシーで行くことも考えたのですが、たまに車を動かさないと。前に一度だけ寝坊したとき車で会社に向かおうとしたのですが、バッテリーがあがっててウチヤマさんにご迷惑をお掛けしたので」
出たな!ウチヤマ!
さりげなく瑠華の周りをうろちょろしやがって(←いえ、していません。仕事です)