ささやかではありますが
それを気にしないと言ったら嘘になるけど、それでもあたしはそれで良かった。
匠は、人が思っている以上に弱い人間だから。
あたしじゃ満足できないことを他で充足してたとしても、あたしは匠を責められない。
最後の一言の、「虚しい」という言葉に、それを強く感じる。
あたしが匠と居るのは、匠のしていることが世間一般から見てどんなに「最低」でも、あたしには絶対に嘘をつかないし、絶対に隠し事をしないから。


「それで、何であたしなの?」

「分からん。でも、真紀がいいと思った。勿論、真紀と付き合うことになったら、今やってることは全て精算するし」

「後悔するかもよ?」

「そしたら、それに気付いた時に考えたらいい」


その時が一体、いつ訪れるのか皆目検討がつかない。
明日か明後日か、1週間持つのかな?
それとも、明日になったら「やっぱり昨日の話は取消しで」って言ってるかもしれない。
匠と話してるうちにあんなに眠たかったあたしの頭も覚醒してきたから、この話が夢ってことはないとは思うけど。


「…『信じられない』って顔してるよ?」

「そういうつもりじゃ…」

「うん、真紀はいつでも俺のことを信じてくれるしね」


だから真紀がいいのかもしれない。
匠はそう付け足した。
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