ささやかではありますが
そこにお互いの感情があるのかないのか、分からないけれど。






「なに、真紀(まき)は俺じゃ駄目な訳?」

「駄目って訳じゃ、ないけど」

「じゃ、考える間でもない」


そういう問題じゃないと思うんだけどな…。
そう思うけれど、体が怠いのと眠いのとで言葉として出てこない。


「真紀…俺の話、聞いてる?」


あたしがずっと黙ってたからか、匠は煙草の火を消してあたしの方を見た。


「聞いてるけどさ…ただ、何でいきなりそんな話になるのかなって…」


重たい瞼と格闘しながら匠を見上げると、匠は優しくあたしの髪を梳いた。
その指先の感覚に、あたしは心地良さに負けて目を閉じる。


「疲れちゃった、俺」


溜息をついて、緩く笑う匠の表情があまりに色っぽくて、不覚にもあたしはどきっとした。


「あっちこっちで愛想振り撒いて、その都度色んな女がべたべた寄ってきて、またそれを相手にして…っていう悪循環。もう、面倒なんだよね。虚しい」


匠は、あたし以外にも女がいるのを全く隠さなかった。
あたしには匠しかいないけれど、匠もそれを知ってる。
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