桜の木の前で
「ねえ桔梗。」

「なあに無月。」

私は静かに答える。

「僕らの娘の瑠璃はとてつもない運命を背負って生まれたんだね。」

「・・・・ええ。」

静かに桜の木の下で遊んでいる瑠璃を見つめる。

「だけど大丈夫。あの子ならきっと乗り越えられるだろう。」

「そうね。私たちがサポートしてあげなければね。」

「いいや。君がだよ。」

「・・・無月は?」

「俺は・・・あの子が16歳。桜乙女として目覚める前にきっといなくなるだろう。」

その言葉に私は軽いめまいを覚えた。
< 110 / 166 >

この作品をシェア

pagetop