angel ring
別れ
家に帰ると、葬儀の準備は済んでいた。

そして

純は小さな棺の中に静かに眠っていた。

久しぶりに見る純の顔。

また涙が溢れだしてくる。



もう純は目を覚ます事はない…

でも…

私の体は母親になろうとしていた。

おっぱいは張り…

母乳が服にまでもれてくる事もあった。

私は母親にはなれなかったのに…

体は母親のままなんだ…。



そして純との別れ…

火葬してしまえばもう純に触れる事も純の姿を見る事も出来ない。

小さな棺に釘が打ち付けられる…

(嫌…やめて…純を閉じ込めないで…)

声にならない声で私は泣き崩れた。

「玲…」

泣き崩れた私を優は力いっぱい支えてくれた。



みんなは私達に同情した。

「あなた達はまだ若いからまた次が出来るから大丈夫だから」

慰めのつもりで言ってくれたのは分かってる。


でも…私達にはその言葉が重かった。

次に生まれて来てくれたとしても、その子は純じゃない…

純が戻ってくる訳じゃない…


今は何を言われても、私の胸の奥に突き刺さるだけだった。


チーン…チーン…
ポッ…ポッ…ポッ…

お経が火葬場に響き渡る。



「最後だから…玲奈ちゃん。純君の顔もう一度見てあげて。」

火葬の前に純に会う事を最後に許され私は棺の前に立った。

(これで…本当に最後なんだ…)

小さな棺の窓を覗きこみ純の顔をこの目にやき付けた。



膝がガクガク震え私は立っているのがやっとだった。

私の異変に気付いた優は私の肩を支えてくれた。


そして

純は火葬された…

もう純に会う事はできない…

私は手を合わせて純に語りかけた。

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