君がいるということ。
臣は不満だった。
一日を全て詰め込み、独り占めをするように抱き抱えたまま去っていく日差し。
いつもよりもどこか赤く見えるそれに、自分が一人だという影を渡された。蛍光灯の光さえも反射させる教室に、臣の机に座ったままうつむく姿がバカにするように笑っている。
バカだから、真剣な気持ちのひとかけらも伝わらないのだろうか。
頭を叩くような軽音部のドラムを叩く音。
いっそバカなりにめちゃくちゃに殴られれば、詩花は自分の真剣な気持ちをわかってくれるのだろうか。
誰もいない、放課後の五組。
太陽の光を眩しく反射していた詩花の髪の毛が、臣は懐かしかった。
詩花がいないこの現状より、詩花に信じてもらえない自分自身が何よりも不満だった。
「なんでかなー」
肩を気持ちに増して重くさせていたギターをそっとおろす。
中学校のころ、好きな女の子に告白したときもそうだった。
理由なんてなく、ただ好きで、それでいいって思っていた。でも、それはきっと違って、理由があってもそれを伝える術が無かっただけなんだ。
「好き」と言ったら、「冗談で言うことじゃない」と一蹴りされた、あのとき。