秘密のMelo♪y⑤*NY編*
相当羨ましげに見てたのか、物欲しげな顔に見えたのか、りんりんはふとあたしの顔を見上げる。
「先に食べてもいいわよ」
くすりと笑いながらそう言ったりんりんに、慌てて首を振った。
食べたいわけじゃなくて…やりたいなって思って見てたのに。
あ、でも…どっちにしても今、手も怪我してるし、無理か…。
「…むずかしいの?」
「え? これが? そんなことないわよ、やってみる? ……あ、今は無理ね…治ったらやってみたらいいわよ。簡単よ」
「そうなんだ…」
簡単なんだ…。
まおにもできるかな。
ふっと自分が果物とナイフを持ってる姿を想像してみたけど、全く形にならなかった。
…似合わないのねきっと。
「ほーらもう終わり。…さ、ほら。つまようじで悪いけど」
じゃーんっとでも言うように、お皿に並んだ桃をあたしに見せるりんりんは、細くて短い棒のようなものを一切れの桃に刺した。
「……なあにそれ」
「だからつまようじ」
「まよねえずの仲間…?」
「全然違うわね」
そうなの。
似てるのに。名前だけ。
「…あんまり似てないと思うわよ…?」
ぼそっとそう言いながら、りんりんはつまようじとやらに刺さった一切れをぱくっと口に含んだ。
それを見てあたしも真似し、もう一つのつまようじの一切れをかじる。
「ん、甘い」