桃染蝶
「そんな・・・」

一夜は、何も語らずに正二を
ただ見つめていた。

「カヤコは、どこだ」

永遠の眠りについた、美しい
花夜子の横顔、頬にそっと
震える指先で触れる、正二。

これ以上、もっともっと
壊れて消えてしまいそうで
触れるのがこわい。

「心細かったろう?

 痛かったろう?
 
 ごめんな、ごめん

 赦して、くれだなんて
 言えないよな・・・」

花夜子の左手、薬指の指輪。

あの日の笑顔

おまえの笑顔

もう、二度と見れない。

正二は、花夜子の唇に口づけた
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