CL




低い屋根の下から、灰色の空を覗こうとした。
それを拒否するように、屋根の端から落ちてきた雫が頬で跳ねて、俺は思わず顔を引っ込めた。
少し後ろの方で、くすくすと笑う声。
自分でもちょっと子供みたいなことをしてしまったなと思っていたから、笑われたことに少しばかりムッとした。

「…なに、笑ってんの」

俺は頬を伝っていく雫を拭いながら、背後で笑っているそいつに向かって、意図せず冷たい言い方でそう尋ねる。
そいつ、キヅキは昇降口の壁に背を預け、まだ笑みの残る表情で俺を見た。

「別に。ちょっとツボっただけ」
「あっそ」
「ガキじゃねんだから、止むまでじっとしてたら?」
「止まないから気になってんじゃん」
「……まあ、梅雨だし」
「……うん」

もっともなことを言われて、反論も何もなく、俺はただ小さくうなずいて見せた。
そしたらキヅキは「お隣どうぞ」とか言って手招きをしてきた。
「うざい」と言い返しながらも、しかたないか、なんて言い訳染みたことを心の中で呟いて、俺はキヅキの隣へと足を向けた。




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