CL




天気予報は、晴れだと言っていた。
でなければ、曇りだって。
だから朝、家を出る時、荷物になる傘を置いてきたんだ。
それなのに。

「……嘘つき」

午後から降り出した雨に憂鬱も憂鬱で、思わず口をついて出た言葉。
壁にもたれかかったまま、俺と同じように灰色の世界を見つめていたキヅキは、ぼそっと呟かれた言葉に「なにが?」と聞き返してきた。
別にお前に言ったんじゃないって。
それを示すように首を二度横に振って見せると、キヅキは釈然としないような、けれど気にもしていない風な様子で、再び視線を空へと向けた。
俺ももう一度、重たい空を見上げた。

雨音が響く。湿った空気が、時折吹く風に揺れる。
誰の話し声も聞こえない空間。
キヅキの隣だけが唯一の居場所だと、そう思ってしまうような、世界。
たとえるならば、そう。
世界の終りのような――。





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