人こそ美味 part2

気が付けば雅は泣いていた。

ポタポタと頬を伝った涙は、シーツに水玉模様を作り出す。

「だから、手首を切ったの?」

自分でも驚くほど低い声だった。

ビクッとした雅はコクリと、ぎこちなく頷いた。

「もし、この傷で雅が死んでも俺は食べたりしなかった」

その言葉に雅が、今まで伏せていた顔を上げた。

「…じゃぁ、さ。もし死んでたら、純はどうしてた?」

「死んでた。雅の隣で」

俺の即答に、雅の口が小さく動き驚きの声が漏れた。

「雅に出会うまで、俺の人生は人肉を喰らう事だけが生き甲斐だった。いつ死んでもいいって思えるぐらい、俺の人生はモノクロで血に汚れていた。でも雅と一緒に居るようになって、俺の世界も気持ちも全てが変わった。雅と明日を生きたいって思える様になったんだ」

気が付くと、子供をあやす様な優しい口調で話していた。

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