渋谷33番
 角を曲がると雪乃は、足を止め立ち止まった。

 まるで全速力で走ってきたかのように、息が荒い。

 全身からは汗がふきだしている。

 しばらく建物によりかかる形で息を整えると、鞄を持ち直し再び歩き出す。

 今度は迷いなく右へ左へと足を進めると、目的の喫茶店が見えた。

 表に『本日貸し切り』の看板をチェックすると、さりげなく周りを振り返り、そして木のドアを開けて中に入った。

 中はひんやりと涼しく、雪乃の好きなジャズが流れていた。

 一瞬だけ目を閉じてそれを聴くと、奥に進む。

 2人の男がテーブルに腰かけているのが見えると、雪乃の顔に笑みがこぼれた。

 高橋と工藤だった。

 工藤は、雪乃の姿を見るなりすぐに立ち上がると、歓声をあげながら雪乃に駆け寄り、両手で強く雪乃を抱きしめた。

「おかえり、雪乃!」






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