渋谷33番
 高橋も立ち上がり、目を細めて笑っている。

「会いたかったよ~」
泣きださんばかりの工藤の声に、雪乃は静かに目を閉じた。

 工藤の腕の力が強くなる。

 しばらくそのまま時間が止まったように誰も動かなくなる。


 雪乃は閉じた目を開けた。

 そして、その表情はそれまでのものとは違い、冷徹なものだった。

「いいかげんにしろよ」
低い声で言う。

 その声に、工藤はパッと雪乃から離れて、
「え~、もう少し恋人気分楽しませてくださいよ~」
と上目遣いですねた顔をつくった。

 それが聞こえなかったように、雪乃はテーブルに荷物を放り投げるとドカッと腰かけた。
「はぁ~、疲れた」
右手を上に上げると、工藤がすぐにポケットから煙草を1本取り出し、雪乃の指に握らせるとライターで火をつける。

「はぁ~~~、生き返る!」
深く吸い込んだ煙を吐き出すと、首をのけぞらせ満足そうに高橋を見た。



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