渋谷33番
 工藤の差し出すそれを受け取ると、先ほど吉沢からもらった名刺をポケットから取り出し火をつけた。

 灰皿に名刺を落とすと、燃える炎を見つめながら雪乃は言った。

「渋谷33番・・・そう呼ばれた女は、もうこの世から消えてしまったんだ」

 
 灰になった残骸から窓の外に目を移す。


 行きかう人々の向こうに立ち並ぶビル。
 
 そして、その向こうには小さく青空が見えた。


 
 夏はもう、すぐそこまで来ている。







            完



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