流れ星を探して
しばらく泣いていると、高ぶった感情も少しずつ落ち着いてきて、蘭は涙を拭った。

「大丈夫?」

黙ったまま蘭の背中をさすっていたピーターは、蘭の顔をのぞき込んだ。

「うん。ありがとう……」

蘭は小さくうなずいた。

「良かった」

ピーターは、フーッと長いため息をつく。

心底ホッとしたような姿に、蘭は思わず、クスッと笑ってしまった。

「あ、笑った」

ピーターは、蘭の顔を見て、嬉しそうに微笑んだ。

蘭はピーターと目が合うと、慌てて目を伏せた。

なんて無邪気に笑う人なんだろう。

蘭は胸の鼓動が、早くなるのを感じた。

心臓をわしづかみにされたような息苦しさを覚えて、蘭は思わず、胸に手をやった。

無意識に、制服のシャツを握る。

苦しい……。

なんなんだろう、この気持ち。

なんともいえない、初めての感覚に、蘭は動揺した。

ピーターはそんな蘭を見守るように、じっと見つめていた。

蘭はピーターの視線を感じるものの、何を話していいのか、言葉が出てこない。

もともと人見知りが激しく、初対面の人とは、うまく言葉を交わせない。

時間をかけて、少しずつ打ち解けることはできるが、それが待てない人には、「何を考えているのかわからない」「暗い」といった印象を持たれるようだ。

だから蘭には、心から信じられる親友がいない。

いつも一人だ。

人と関わることが苦手で、昼休みも、誰も来ない校舎の裏庭で、一人で弁当を食べていた。

息のつまるような沈黙に、蘭は居たたまれなくなった。

「あの……」

という蘭の言葉を遮って、ピーターはスッと立ち上がった。

無言のまま、蘭に手を差し出す。

蘭はピーターを見上げた。



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