流れ星を探して
悔しくて、涙が出てきた。

なんだか、わけもわからず悲しくなってきて、蘭は嗚咽しながら、泣き始めた。

どれくらい泣いていたのか、ふっと頭に触れる手を感じて、蘭は顔を上げた。

ついさっき、見とれてしまった、あの深い色をした瞳と目が合った。

「大丈夫?」

“アイツ”が、口を開いた。

蘭は感情が高ぶったまま、嗚咽を止められずに、肩を揺すりながらうなずいた。

“アイツ”は、ゆっくりと手を伸ばし、細い綺麗な指で蘭の涙を拭った。

蘭は戸惑いながらも動くことができず、ただ“アイツ”の顔を見つめていた。

「ぼくは、ピーター。きみは?」

「らん……」

「らん……。花の蘭?」

ピーターは、優しい目で蘭を見た。

蘭はうなずいた。

「会えてよかった。蘭、鞄忘れて行っただろ?」

ピーターはそう言って、鞄を少し持ち上げてみせた。

蘭は鞄を見ると、また涙が出てきた。

「ありがとう……。もう、誰かが持って行ったんだと思って……」

それから、言葉が続かない。

「蘭……」

ピーターは慌てたように、蘭の肩を抱いた。

「泣かないで、蘭」

ピーターは子供を癒すように、蘭の頭を撫でた。

柔らかい、大きな手が心地いい。

蘭は不思議な安心感を覚えて、うつ向いたまま目を閉じた。



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