龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
夏休み補習も最終日。


今日の帰りはみんな浮かれている。

『カラオケ行くぞ!』って誰かが言い出して、クラスの半数が行くことになった。

「わたしは帰るね」って言ったら大ブーイング

たまにはみんなで遊ぼうよ――って

どうしようかな

帰っても彩名さんはアトリエにこもりっきりだし

圭吾さんがいるとは限らないし

なにより梓さん達に会いたくないし

やっぱりちょっとだけ行こうかな


「志鶴は無理みたいよ」

亜由美がそう言って教室の入口の方を意味ありげに見た。


圭吾さん?


圭吾さんがいる。

慌てて入口まで小走りで行った。


「慌てなくてもいいのに。手、机にぶつけたろ。見せてごらん」


全然なんともないのにって思いながら右手を出す。

圭吾さんはわたしの手をとって親指で指の関節をそっと撫でた。

それから手の平を返して指の付け根を撫でる。

体がカッと熱くなった。
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