龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
アイスクリームショップを出たところでマイクロバスが私達の横に止まり、助手席の窓が開いた。

「君達、『鬼の首塚』ってどこだか知ってる?」

ああそれなら――って言いかけたら、美幸が押し止めるように『知りません』と答えた。

「そっかぁ、どうもありがとう」


わたしが怪訝そうな顔をすると、車がいなくなってから美幸にしこたま怒られた。

「あんたって子はどこまで呑気なの! 知らない人とは話さない!」


わたし、小学生??


「今時分、心霊スポット特集とかでテレビ局や雑誌記者がよく来るのよ」

亜由美が言う。

「大手はまだいいけど、身元がはっきりしないような連中もいるから美幸の言う通り関わらない方がいいわ」

「それにあそこ『線』から外れてるから行っちゃダメだよ」

美幸が言う『線』とは、この辺りの人が『龍線』とか『龍道』と呼ぶ鎮守のための一種のパワーラインの事。

見える人には見えるらしいのだけれど


「美幸ってさ、何が見えてるの?」

美幸は羽竜家出身のお祖母ちゃん譲りの特別な目を持っている。

「色々だよ。ただ、見たくないものほどよく見える。人の悪意とかは形になって見えて気持ち悪くなる。おかげでなかなか人を好きになれないんだ――志鶴といると楽になるけど」


へっ? わたし?


「あんたって光に満ちてるの。浄化される感じ。あんたみたいな彼氏がいたら楽なんだろうけど」

「志鶴みたいな彼氏だったら、奥手すぎて苦労するわよ」


亜由美……ひどいよ
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