龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「叔母さん――お母さんは志鶴がいくつの時に亡くなったの?」


うーん いつだっけ?


「確か小学校三年の時だから……八歳?」

「八歳? そんなに早く?」


圭吾さんは絶句してから、両手で顔を覆った。


「圭吾さん?」

「八年間も一人で怖い思いしてたのか?」


かすれた、振り絞るような声


「毎日雷が鳴るわけじゃないし」

「あんな姿、一生に一回見れば十分だ!」


圭吾さん?

泣いてる?

いやだ、わたし何しちゃったの?


「ごめんなさい。次から何でも話す。もう隠し事したりしない。圭吾さん? 圭吾さんったら!」


痛いほど抱きしめられた。


圭吾さんはわたしの肩に顔を埋めて繰り返し言った。

「志鶴を幸せにしたい。怖い思いも、悲しい思いもさせたくない」


「うん」


『アレノ笑顔ガ見タイ』と言って闇に消えていった狐がまぶたに浮かんだ。


圭吾さんはわたしを愛してる


初めて心からそう思えた。


「大好きよ、圭吾さん」

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