あきれるくらい側にいて
 
「ねぇ、さっき“サクラさんにも”って言ってたけど、ハルにもお姉ちゃんがいるの?」


ソファに腰をかけながら、そんな話題を持ちだした。シ~ンとなりかけた空気を変えるために。


「はい、6コ上の姉が。今の会社に入れたのも、その姉のおかげで」

「お姉さんの?」


訊き返すとハルは、ちょっと俯き加減に話しだした。

この約3ヶ月の間、ハルとは一緒に仕事をしてきて毎日言葉を交わしてるのだけど、こんなプライベートな話題って初めてかもしれない。


「オレ、高校の卒業式の直前に、慌てて就活しだして。進路なんて周りはもうとっくに決めた後なのに」


そう言って顔を上げ、だけどあたしとは目を合わせず、数十センチ先に視線を移す。

そんな様子になんとなく躊躇しながら、あたしは話の続きを促した。



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