君しか愛せない
第6話 静かな食卓


いつもは和やかな食卓が、今日はやけに静かだった。

だから俺達は部屋で食べるから呼ばなくていいと言ったのに。

凌なんてあからさまにそっぽを向いて無視を決め込んでいる。

父さんと母さんもこの気まずい雰囲気をどうしたものかと、互いに目配せをして肩を竦ませていた。

かし、このどんよりとした空気の原因が少なからず自分にあると感じている小春がしょんぼりしているのにはいささか心が痛む。

少しでも早くこの場から逃げたい俺は、いつもの三倍程のペースで食事を口の中へかきこんだ。












「ごちそうさま」

「あら、小春。もうお腹いっぱいなの?」

普段は食欲旺盛な筈の小春の少食ぶりに、母さんが心配層に声をかけたが、こんな状況では小春でなくても箸が進まないというもの。

「いこ。和樹君」

「う、うん。あ・・・ごちそうさまでした」

既に食べ終わっていた木下の腕を引いて立ち上がった小春が、リビングのドアを閉めた途端に張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ気がした。

「全く・・・あんた達、小春に彼氏ができたくらいで何をそんなに拗ねてるの?」

「別に。拗ねてなんかないよ」

相変わらず不機嫌そうな表情でそう答える凌には全く説得力がない。

まあ・・・凌ほど態度に出していないとは言え、俺も相当不貞腐れているのだから人の事は言えないのだけど。
「困ったお兄ちゃん達ね」

「子供扱いすんなよ・・・ごちそうさま。俺も部屋にいるから」

食べ終わった食器を流しへ運び、呆れたため息を漏らす母さんを横目に俺もリビングを後にした。

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