KYOSUKE
何故そう思ったのか―――
ただ、酷く―――
寂しかった
その想いが通じたのか、お嬢はぴたりと足を止めた。
香水の香りも遠ざかってはいかない。
すっと腰を降ろす気配があって、俺は彼女の方を向いた。
「ここから見る桜は………」
お嬢がぽつりと漏らした。
俺が見ていることに気づいたのか。
いや、そうじゃないな。きっと独り言だ。
「ここから眺める桜は―――ホントに見事なもんなんだ。キョウスケ」
名前を呼ばれて、俺は重い瞼をこじ開けることができた。