喫茶投稿
望郷の戦士
「もうちょい、背景暗めの方がいいかな」
編集画面を何度も見直し、トーンを被せてCGを仕上げる。
「よし、出来た。うわ、もう3時前だよ。飯食いに行こうか」
「そうだね」
徹也と行きつけの喫茶室に向かう。
「ディアナの出番も今回で終わりか。人気キャラなんだけどね」
徹也がホットサンドを頬張る。
「監督は生き残らせるつもりだったらしいけど」
コーヒーに砂糖を落としながら答える。
「死なせるつもりで出したキャラを、人気出たからって延命するのは自分の作品を貶める行為だって原作者が突っぱねたらしい」
さっきまで編集していた、幾条もの閃光が戦士を貫く場面が脳裏に蘇る。
「そこを曲げるんなら、全編別物にしてくれって言われたんだと」
まあ、原作では爆死だったから、せめてもの抵抗なんだろうか。
「確かに、物語の中のことであっても、命を軽々しく扱っていいなんて話はないよね」
食事はすぐに終わる。
「先にスタジオに戻っててくれ。ちょっと本屋に行ってくる」
「わかった」
徹也を見送ると、残ったコーヒーをあおる。
「ディアナが本当にいたら、この扱いをどう思うんだろうな…」
そんなことを考える余裕すらない世界の戦士と、語り合ってみたくなった。
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