それでも君が。




私は慌てて彼の袖をつまむ。





「藤堂君! やめて」


「お前な、言われっぱなしか? 俺はこういうでしゃばる女が一番嫌いだ」


「そういう問題じゃ……」





眉を潜めて彼を見上げるも、藤堂君はもはや私を見ておらず、秋山先輩を睨むようにして見ていた。



すると、秋山先輩がフッと鼻から息を吐き、口を開いた。





「……なるほどね。あなた、あの子達に絡まれた時にも藤堂君に助けられたらしいじゃない」


「……あの子達……?」





一気に、昇降口での、怖い先輩達との出来事が頭をよぎる。



秋山先輩は続けた。





「あの子達は馬鹿なの。蒼汰から止められてたのにも関わらず、あなたに手を出したりして」


「……馬鹿って……そんな言い方っ……」


「言っておくけど。私は蒼汰からは一切言われてないから。あなたに手を出すなとか」





私の言葉を遮り、秋山先輩は強く言葉を連ねた。




< 202 / 292 >

この作品をシェア

pagetop