それでも君が。
私は慌てて彼の袖をつまむ。
「藤堂君! やめて」
「お前な、言われっぱなしか? 俺はこういうでしゃばる女が一番嫌いだ」
「そういう問題じゃ……」
眉を潜めて彼を見上げるも、藤堂君はもはや私を見ておらず、秋山先輩を睨むようにして見ていた。
すると、秋山先輩がフッと鼻から息を吐き、口を開いた。
「……なるほどね。あなた、あの子達に絡まれた時にも藤堂君に助けられたらしいじゃない」
「……あの子達……?」
一気に、昇降口での、怖い先輩達との出来事が頭をよぎる。
秋山先輩は続けた。
「あの子達は馬鹿なの。蒼汰から止められてたのにも関わらず、あなたに手を出したりして」
「……馬鹿って……そんな言い方っ……」
「言っておくけど。私は蒼汰からは一切言われてないから。あなたに手を出すなとか」
私の言葉を遮り、秋山先輩は強く言葉を連ねた。