それでも君が。
何も言い返す言葉が見つからないままでいると、秋山先輩はまるで“勝った”と言わんばかりに、またフッと鼻で息を吐く。
「とにかく。いつまでも蒼汰の彼女の座にのうのうといられると思わないで。私も、彼のこと好きだから」
面と向かって言われたのは初めてだった。
蒼君を好きな人は、きっと他にもいる。
でも、秋山先輩は、何故か一番怖い。
足が、すくむ。
「それじゃあ」
先輩は短くそう言って、きびすを返す。
教室から出て行く時、彼女の長いウェーブのかかった髪の毛が、フワリとなびいた。
──自信があるからかも、と思った。
秋山先輩は、きっと自信があるんだ。
誰よりも自分が蒼君に相応しく、誰よりも、蒼君のためになることを出来るって。
実際、蒼君のことで、私は知らなくて、秋山先輩は知ってることがある。
今、もう既に、蒼君は秋山先輩に支えられてるかもしれないのだ。
胸がヒリヒリと痛む。