それでも君が。
プリプリと拗ねてしまった澪ちゃんを見て、肩をすくめていると。
「俺アイツ嫌い」
ポケットに両手を突っ込みながらただ歩いていた晴君が、いきなりそんなことを言った。
私が「あ、アイツって……」と聞くと、晴君は
「マネージャー」
と、一言。
晴君は基本的に物静かな人だけど、口を開いたと思えば、ギョッとするようなことを言う人だ。
今日も、短髪の頭を触りながら、衝撃発言を披露した。
どう反応したらいいのか分からず蒼君に目を向けると、彼はまた何とも爽やかに笑っていた。
──笑うとこだったかな。
真剣に考えてしまう。
「じゃあな羽月、また放課後。澪ちゃんも、また」
気付くと、3年の校舎の前に着いていて、蒼君はそう言って右手を上げた。
結局、晴君に詳しいことを何も聞けないまま、私達は別れた。