それでも君が。
藤堂君が、私に向けていた目が、ひどく優しく見えて。
何だか切なくなるような。
悲しくなるような。
そんな目。
やっとのことで、口を開く。
「そんなこと、ないよ……本当にありがとう」
「……ならいいけど」
「あの……それと、あの、藤堂君に嫌な思い……」
──嫌な思いさせてごめんね。
そう言おうとしたけど、頭に何か置かれたことにビックリして、つい、その先の言葉を飲み込んだ。
手だ。
彼の手が、また私の頭に置かれていた。
「お前に腹立ってんじゃねぇから」
まるで押さえつけるかのように私の頭をグシャグシャとして、結局謝らせてくれないまま、彼は廊下を進んだ。
微かだけど、柔らかい笑みを残して。