それでも君が。
「藤堂君!」
廊下に出るなり、そう叫ぶ。
藤堂君はもう廊下の角を曲がりそうな所まで行っていたけど、私の声によって、その足を止めた。
私は急いでそこまで走り、彼の前に回った。
息を吐いてから彼を見上げる。
やっぱり、端正な顔立ちだ。
女たらしっていう印象でばっかり彼を見てたから、気付かなかった。
彼は、とても穏やかな瞳の色をしている。
「あの……ありがとう」
私が何か言うのを待っている風だった藤堂君は、その言葉を聞くなり、
「何が」
と返してきた。
自分のシャツの裾を握りながら、視線を落とす。
「えっと……もしかして……私の元気がないの知ってて、委員会に誘ってくれたのかなって……」
「………」
「あ、勘違いだったら……」
「逆に、お前の元気を奪いそうなことになったけどな」
弾かれたように顔を上げる。
でも次の瞬間には、体が凍りついた。