それでも君が。
何とか、糸口を見つけ出したいんだ。
元から素っ気ない人には、自分が素っ気ないのに理由なんてないのは分かってる。
でも、何か、何か蒼君の心をほどく糸口が見つかるかもしれない……
「俺の態度について何か言うも何も……そいつだってかなり素っ気ねぇからな」
“そいつ”が写真の中に写る人のことを指すのだと、国語の成績が悪い私にも分かった。
写真に目を落とす。
先生の奥さんは、長くて真っ黒な髪の毛は澪ちゃんを思わせるけど……
何というか、澪ちゃんとは正反対な、典型的な美人タイプだ。
切れ長の目に綺麗な形の鼻。
唇は薄めだけど、色気がある。
素っ気ないと言われるのも、何となく分かる空気だ。
その写真を、長い指がスッとさらっていく。
見上げると、そこには晴君。
無表情で写真を見ている。
──そう言えば、晴君も素っ気ないと言えば、そうなのかな……。
でも、何か、素っ気ないのとは違う気もする……。
と思っていると、椎名先生が銀色の灰皿にタバコを押しつけながら、また口を開いた。