それでも君が。




目を開けてすぐは、視界がぼやけた。



カーテンから覗く少しネズミ色をした光が、目を刺激する。



雨の音がする……。



シトシトという擬音を、人はよく作ったものだと思う。



──今日は何日なのか。



今、何時なのか。



何で私はこんなに深く眠っていたのか。



考えを巡らせる。



ふと横を見ると、携帯が開きっぱなしで枕元にあった。



──蒼君……!



一気に記憶にかかっていた霧が晴れたかのようになり、気付いた。



リストバンドを取りに来てって言わなきゃいけなかったのにっ……



携帯画面を見て、やっぱりもう朝だと確認した。



いつ出発するんだろう……。



私、あまのじゃくかな?



もう、1週間も会えないかもしれないって思ったら……



猛烈に会いたくなる。



それに、やっぱりリストバンドを持っていてほし……



ふと、気付く。



少しでも蒼君の夢を見れたらと思って、リストバンドも枕元に置いたはずだった。



──ない……!



どう見てもそこには無いのに、置いてあったはずの所に、手を滑らせる。



ベッドの下にも、ない。



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