それでも君が。
──蒼君……?
「羽月?」
ドアの向こうから、控えめに響くお母さんの声。
私は急いでドアを開けた。
「あら、羽月おはよう、具合は……」
「蒼君が来たの!?」
「……え?」
開口一番に出した私の言葉に、お母さんは目を丸くした。
でも、すぐに私の気持ちを察してくれたのか、目を細くした。
「来てないわよ。来たら起こすに決まってるでしょ」
「……リストバンドが……ないの」
「……ああ……あれは、お母さんが届けたのよ」
「……本当に?」
「何が悲しくて、娘に嘘つくのよ」
一瞬だけ、お母さんに戸惑いの色が浮かんだ気がした。