それでも君が。
「岩越? お前何してるんだ」
「わっ! せ、先生!」
いきなり私に声を掛けたその人は、数学担当の椎名先生だった。
無愛想なのに、何故か生徒に人気がある先生だ。
椎名先生は、あまり使われていない資料室のドアノブに手をかける私を見て、眉を片方だけ歪めた。
「資料室に何か用か」
「え! いえ! あの!」
「何だ」
「みみ、見ちゃいけないモノを見てしまった訳で……」
「なに訳の分かんねぇこと言ってんだ」
「あっ! ちょ、せんせっ……」
私の手を払い、自らドアノブに手を掛け、そのドアを開く先生。
私みたいに静かに開けるんじゃなく、何とも豪快に。
当たり前だけど、中からは「きゃっ……」という女性の声が。
あー……!