それでも君が。
「……そ、君……?」
「羽月……分かるか?」
「……ん……」
「何もされてないか? どこも痛くないか?」
私は、静かに頷いた。
何かを吐き出すかのように、強くハッと息を吐いた蒼君。
彼の手を、ギュッと握りしめる。
「そ……君……」
「ん? もう大丈夫だ。救急車も来るから」
「……ううん……蒼君……ごめん……」
「……え?」
「ごめん、なさい……私……私の、せいで……」
そこまで言うと、蒼君は目を見開いた。
「羽月……お前……」
「わ、私……何て謝ったらいいのか……分からな……」
「羽月、いいから。今は余計なこと思い出すな。混乱してるだけだよ。いいから、眠れ」
蒼君はそう言って私を強く抱きしめてくれた。
「好きだよ……羽月……」
また深く沈んでいく意識の中で、蒼君の声が聞こえた。