それでも君が。
「……き! ……づき! 羽月!!」
遠くから聞こえていた声が、一気に近くに聞こえた。
そして、雨の音も。
目を開けると、そこには青ざめた顔をした蒼君。
走馬灯のように流れた映像と、現実の区別が、一瞬ではつかなかった。
これは、現実だ……。
どうやら、叫んだのと同時に、意識を失ってしまったようだ。
──それを思い出し、また、ハッキリ理解した。
私は……
私は、記憶を失っていた。
蒼君が自分に代わって、刺されてしまったということを。
愛する人を、自分のせいで傷つけてしまった……。
「羽月! しっかりしろ!」
倒れた私を抱えるようにしてくれている蒼君は、尚も私にそう呼びかける。
朦朧とした意識の中、チラリと横に目をやると、犯人が刑事に取り押さえられてるのが目に入った。
あの刑事さんは……
そうだ。
あの時の刑事さん達……
「羽月……? 羽月!」
完全に目を開けた私の頬に、蒼君の温かい手が触れる。
私は、その手に自分の手を重ねた。