それでも君が。




「あれ、お前……」




低くてかすれた声が昇降口に響く。



雨の日って、暗いからなのか、声がよく響くんだ。



ふと顔を上げると、そこには藤堂君が立っていた。





「出たな、エロ魔神」





怯みそうになるのを堪えにがらそう言ってやると、 藤堂君は眉をしかめた。





「覗きなんかする方がエロいだろ」


「ていうかさ、あんな所で、学校で、あんなコトしちゃいけないでしょう!」


「あんなコト?」


「あんなコトどころか、こんなコトまでしようとしてたでしょ!」




あの後、結局藤堂君は教室に一度も顔を出すことはなかった。



きっと、椎名先生に見つかったからと、場所を移したんだと思う。



エロ大魔神め……。




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