それでも君が。
晴君が黙るということは、知らないということだ。
私は、目の前のテーブルに散らばる参考書らしきものを、意味もなく積み上げた。
「……秋山先輩」
ボソリと、つい、言葉として口から出てしまった。
晴君は、ベッドサイドに向けていた目を、私に向けた。
少しだけ、驚いた顔をしている。
「……今日ね、秋山先輩と2人でいるとこを、見たの」
「………」
「しかも、蒼君……私を見たのに……目を、逸らしたっ……」
今になって、哀しくて悲しくて仕方なくなった。
これが夢だったらいいのに。
全部全部……夢だったら……。
ギシッという音と共に、晴君が立ち上がった。
それを見上げることもなく、やっぱりテーブルに目をやる私の横に、彼は静かに座る。
そして、片膝を立て、私の頭をそっと撫でてくれた。
その温もりに安心して、ふと身体の力を抜いた、その時だった。