それでも君が。




──ジャッ……



蒼君が、少し後ずさった音がした。



ゆっくり唇を離し、苦笑いを漏らす。





「へへ……ごめん、歯が当たっちゃった……。いつも、いかに蒼君任せなのかが分かるね。……私ももっと勉きょ」





私の言葉は、蒼君の唇に飲み込まれた。



私の腰を支える腕の強さと



いつもより激しいキス



そして、痛いくらいに、私の肩を掴んでくる、手。



そのどれもが、私には経験したことがないもので。



背筋がゾッとした。



思わず「んっ……」と声を漏らすと、蒼君はもっと強く唇を私に押し付けてくる。



応えたいのに、応えられない。



もどかしささえ感じていると、蒼君が私の両肩を持って、自分から離した。




< 83 / 292 >

この作品をシェア

pagetop