それでも君が。
だけど、蒼君が私に向けた背中は、完全に私を拒否するものだった。
きっと、今は何を言っても、ダメなんだ。
私を受け入れては、くれないんだ……。
「……分かった……帰る、ね」
「………」
「また……連絡、してもいい?」
「……時間出来たら、俺からする」
「……分かった」
私の顔を見ないままの蒼君に背中を向け、ドアノブに手をかけた。
ドアを開けるのが、こんなに憂鬱だった時はない。
嫌だ。
離れたくないよ。
顔を振り向かせるけど、やっぱり私を見ていない蒼君が目に入り、落胆する自分を隠せない。
その時ふと視線を落とすと、踏み台が目に入った。
背が低い蒼君のお母さんが、お庭の手入れをする時に使うもの。
私はそれに飛び乗り、蒼君の腕を握り、彼を強引に振り向かせた。
目を見開く蒼君の顔が目に入ったけど、彼が何も言い出さない内にと、その唇にキスをした。