執事と共にお花見を。
覗きこむその先には、黒髪の少女が腹這いになっている。


「ベッドの下にもぐり込むほど、お嬢様の寝相は悪くていらっしゃるとは、存じ上げませんでした」

「そんな訳ないでしょう」


お嬢様――そう呼ばれた、恵理夜はのそのそとベッドの下から顔をだした。


「……主人を起こそうと部屋に入ったら居ない、という状況にもいい加減慣れろ、と言うことでしょうか」

「違うわよ。これが、滑り込んできたの」


と、青年に薄桃色の花弁を差し出した。

差し出すその手は、陶磁器のように白い。


「桜の花びら、ですか」

「そう。風に乗って飛んできたみたい」


と、黒目がちな力強い瞳を窓の外に向ける。

大きな屋敷の広大な庭。

その一角にある桜の木からその花弁はやってきたようだ。
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