執事と共にお花見を。
昨日、地面に落ちていたエンジ色のベレー帽は、今はきちんと頭の上に乗せられている。


「お前か、余計なことをしくさったのは」


目を開き、恵理夜に焦点をあわせた瞬間の第一声。

老人にしてはしっかりした、そしてつっけんどんな声だった。


「余計なこと?」

「救急車なんぞ呼びよって」

「あら、余計なことだなんて。自己管理が出来なくてこんなところで倒れていた方はどなただったかしら」

「生意気なガキじゃの」

「その、生意気なガキのお世話になったのは?」


ふん、と老人はこれ以上ないほど不機嫌に鼻を鳴らした。
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