執事と共にお花見を。
不意に、恵理夜が咳き込んだ。


「花冷えか」

「風流な言葉を知ってるのね」

「突っかかってねぇで早く帰れ」


つっけんどんな言葉。

しかし、悪意が無いのはわかっていた。


「そうするわ」


恵理夜はベンチから立ち上がった。


「また、倒れるような無理はしないでね」


老人は、鼻を鳴らすだけで何も答えない。

それでも、以前感じた不快感は無かった。

恵理夜も、何も言わずに公園の出口に向かった。
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