ティッシュに涙と少しの残骸
『可愛く撮れてるのに見ないのか?』
「猛のバカ」
『なんだよ!観たがってた映画観れたのになんで不機嫌なんだよ』

美葉はぴたりと歩みを止め、うさぎ目のまま俺を睨み

「だって普通泣き顔のプリクラ撮る!?ぐしゃぐしゃ顔のどこが可愛いのよ!」
『美葉は可愛いよ』

俺の即答に美葉は言葉を失ったらしく顔を背けた。ゆっくりと距離を縮めて誰も居ない事を確かめ抱きしめる。

『プリクラって笑顔か変顔で撮るだろ?感涙プリクラなんてなかなかないぜ。レア物だな』
「…そうかな?」
『ああ、美葉には笑顔が一番だけど泣いてる顔も結構好きなんだ。俺は泣かせたくないけどな』

美葉の肩に手を移動させて屈んでキスをした。身長差があるから立ったままのキスはあまり好きじゃないが美葉は好きなんだよなあ。キスする時背伸びするのがいいらしい。俺にはよく解らないけど。
辺りが暗いからキスが出来て良かったと、密かに思いながら家に着くまで手を繋いで映画の話や侑一の話をしながら歩いた。

「今日はありがとう。楽しかったよ」
『かまってやれなくて悪いな―と思ってるからさ』
「私子供じゃないよ」
『じゃ、かまってやらない』

美葉のパンチが腹に炸裂した。結構痛い…

『本気で殴るな!』

玄関のドアを閉めようとする美葉に出来るだけ小さい声で叫んだ。
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